ピョートル・フェリクス・グジバチ氏による講演

ピョートル・フェリクス・グジバチ氏と弊社代表の田中及び弊社従業員の数名でお目に掛かる機会がございましたので、そのときのある社員目線でのレポートを掲載させていただきます。(「田中先生」は弊社代表の田中を指しております)

<弊社編集担当>

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9月14日弊社代表の田中先生から突然とあるお誘いの電話が来た。先生が敬愛してやまないピョートル・フェリクス・グジバチ氏が講演を行うので参加しないかという内容だった。講演は電話を受けたその日だ。突然のことで驚いたが、シリコンバレーに行って度胸がついたのか、とりあえず参加させていただいた。

ピョートル氏は元々Googleの人材開発担当としてご活躍された方で、現在はプロノイア・グループ株式会社代表取締役とモティファイ株 式会社取締役を務められている。2社の経営を通じ、変革コンサルティングをAIに置き換える挑戦をされておられます。

(ピョートル氏についてhttps://mirai.doda.jp/series/interview/piotr-feliks-grzywacz/    http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1710/27/news034.html

ピョートル氏による講演

この日の結論を言うと、講演、そしてその後のピョートル氏との食事は、勉強になったという陳腐な言葉では表現しきれないほど、大きな感動と学びを私にもたらした。

 

ピョートル氏が代表取締役を務めるプロノイアはコンサルティングを業務としている。特徴は企業戦略だけではなく、企業の体制や環境へのコンサルティングに力を入れていることだ。従業員の各人が仕事に打ち込むことができ、新しい価値を生み出すことができる環境を会社が構築するために助言を行っている。キーワードは心理的安全性だ。他者の反応に過度な不安を抱くことなく、個人が持つポジティブな側面もネガティブな側面も許容する環境のことを言う。ここでは個人を私生活も含めて総合的に見ることや、ユーモアの重要性が強調された。心理的安全性が確保されると、個人が仕事で最大のパフォーマンスを発揮することができ、チームが有益な議論を重ねながら社会的に重要な課題に取り組み、新しい価値を生み出すことが可能になる。この考えを理論的に補強するのは、今西錦司の「棲み分け論」から派生する人間観である。これについては、京都市ソーシャルイノベーション研究所長の大室悦賀氏が言及していた。これまでの世界で当たり前だと考えられていた競争は、模倣の連続によって生まれる。しかし、これは本質的には新しい価値を生み出していない。むしろ人間は棲み分けられており、それぞれが独自の価値を提供し、新たな価値を「共に作る(co-create)」ことが重要なのだ。この棲み分けはチーム内、会社内、地域内、国内、世界、どのレイヤーであったとしても意味を持つ。新たな価値を生み出すスタートアップでさえ、そればかりが集まると多様性を持つことができず、むしろ競争に堕してしまう。アメリカではシリコンバレー、日本では東京でさえ多様性を持たず、もう面白くないと言う。その点、京都という環境は、大阪や神戸といった大都市に近いので商業が身近にあり、多数の研究者を擁する学術都市としての側面も持ちながらも、伝統文化の伝達と発信も行っており、多様性が維持されているのだ。京都でこのような示唆に富んだイベントが行われたのは必然といってもよいだろう。

 

その後、イノベーションを生み出すチーム作りとは何かを実際に体験するためにワークショップが行われた。まず2人1組になり、3分間笑わずに相手の目を見る。その後、相手の価値観を問うような質問を交互に行う。この質問はテンプレートが用意されており、それに沿って行われた。そして今度は違う人と、どう感じたかを話し合う。私の感想は以下のとおりである。3分間「笑わずに」相手の目を見ることで、理由はわからないが相手に信頼感を持つことができた。そして信頼した相手から価値観を問う質問をされると、一応は即答しながらも、自分の価値観には再考の余地があると思えてくる。そして最後に面白かったのは、違う人がどう感じたかを聞いた時であった。その人は相手の目を見る時に、真顔では自分が変な顔ではないかと気になってしまい、どうしても笑ってしまいそうになったという。後にピョートル氏にこのことを直接尋ねた。人の目を笑わずに見ることによって信頼感が生まれるのは、真顔で向き合うことができるからだ。真顔であることで真剣に話をする土壌が作られる。この土壌があってこそ、前述の心理的安全性が確保される。しかし、日本人は相手の目を見る時にどうしても笑ってしまう。この笑いを日本的な「和」と言えば聞こえは良いが、実際には何もかもをうやむやにしてしまう。話をする土台を壊してしまうのだ。もちろんこれは、人と話をするときはまったく笑うな、ということではない。笑いは人と人が楽しさやおかしさで共鳴したときに自然と生まれるものだ。日本人の愛想笑いは不自然なのだ。

 

ワークショップ後には田中先生のお力によってピョートル氏と共に食事をとることができた。私の他に、田中先生の法律事務所で働いている女性がいた。彼女は初対面の人の前ではあまり話さず、感情の表現も大きくはない。そのような彼女に対して、ピョートル氏は「どうして話さないのか」と聞いた。彼女は「話すのが苦手」だと言った。そこでピョートル氏は4分間、周りの人間は口を噤み、彼女が自身の人生とその転換点について話すように求めた。彼女は戸惑いながらも4分間自分の生い立ちと、どうして話すのが苦手になったのかを話した。私は彼女と言葉を交わしたことはあったが、話すのが苦手な理由は初めて聞いた。そして次に1分間好きなことについて、次の1分間はそれが好きな理由、そして次の1分間は好きなことを使って田中先生の仕事について助言する、といったようにピョートル氏は彼女に話すことを求めた。すると、彼女は簡潔かつ適切に、また示唆に富んだ話をするのだ。彼女が好きな宝塚歌劇団がなぜ女性に好かれているかという実感を以てして、田中先生がブランディングを行うにはどうすればいいかがサラサラと出てくるのだ。彼女の新しい側面を知れたこと、また彼女の助言の的確さに、相手の心の深くにあった考えを知ることができ、たいへん感動した。また、彼女の新しい側面を引き出したピョートル氏について、どれほど人間のことが好きなのだろうかと思い、やはりたいへん感銘を受けた。彼女は話すのは苦手だと言った。しかしピョートル氏はこう答えた、「willとskillを混同してはいけない」と。

 

 私はピョートル氏の、人間に対する理解の深さに衝撃を受けた。昨今省庁主導の下、多くの企業で働き方改革が実践されている。それは長時間労働の是正、同一労働同一賃金、高齢者の雇用促進など制度面での改革である。しかし、本当に働きやすい職場を作るというのは深い人間理解に基かなければならない。ピョートル氏の実践は後者なのである。

 

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